この記事を書いた人
はり師・きゅう師(国家資格) 整骨院勤務15年の現役鍼灸師パパ。 肩こり・腰痛・産後ケアを専門に、のべ数千名を施術。 現在は0歳の息子を育てながら、リアルな育児体験をもとに情報発信中。
この記事について: 整骨院15年・鍼灸師パパとしての経験をもとに書いています。育児をしながら「体のしんどさ」と向き合い続けてきた視点で、実際に使えるセルフケアをお届けします。
「冷房を入れたとたんに体がだるくなる」「抱っこしているときに肩と首が特にしんどい」——5〜6月頃から、こういった訴えが鍼灸院でも増えてきます。
本格的な夏になる前の初夏は、気温はまだそれほど高くないのに冷房を強めに設定してしまいがち。この時期特有の「冷えすぎ」が、育児疲れをじわじわ悪化させているケースがとても多いんです。
今回は、冷房冷えと肩こりの関係を東洋医学の視点も交えて解説しながら、今日からできる対策を5つお伝えします。
東洋医学では、外からやってくる体に悪影響を与える要素を「邪気(じゃき)」と呼びます。冷えはそのなかでも「寒邪(かんじゃ)」と呼ばれ、体の表面から内部へと侵入することで、気血(きけつ)の流れを滞らせると考えられています。
5〜6月の初夏は、体がまだ「冬モード」から「夏モード」へ切り替わりきっていない時期です。そこへ急に冷房の冷気にさらされると、体がその変化についていけず、寒邪が入り込みやすくなります。
とくに、首・肩・背中は「風門(ふうもん)」「大椎(だいつい)」など、外からの邪気が入りやすいツボが集中しているエリア。冷房の風が直接あたると、この辺りがいちばん最初に影響を受けてしまいます。
冷えによって体に何が起きているのか、もう少し具体的に見てみましょう。
体が冷えると、血管が収縮して血流が低下します。血流が落ちると、筋肉に必要な酸素や栄養が届きにくくなり、老廃物も流れにくくなります。その結果、筋肉がガチガチに固まってしまうのが「冷えからくる肩こり・腰痛」のメカニズムです。
赤ちゃんと一緒に室内にいる育児中は、激しい運動をすることがほとんどありません。体を動かさないと熱が生まれにくいので、冷房の中でじっとしているだけで体はどんどん冷えていきます。
授乳中のママはとくに注意が必要です。授乳には大量のエネルギーが使われるため、体の「熱を作る力」自体が落ちやすい状態にあります。
抱っこをしているときの姿勢を思い浮かべてみてください。
この姿勢だけでも肩と首に相当な負担がかかっています。そこへ冷房の風が直接首や肩にあたると、もともと緊張している筋肉がさらに収縮し、コリが一気に強くなってしまいます。
「エアコンの風口の下でよく授乳している」というママさんは、これが慢性化している可能性が高いです。
冷房の設定温度を下げすぎないことが最初の一歩です。外気温との差が5℃以上になると、体への負担が大きくなるとされています。5〜6月の外気温であれば、26〜28℃設定でも十分涼しく感じられます。
温度計を使って実際の室温を確認しながら調整してみてください。
薄手のストールを一枚常備しておくだけで、首・肩への冷気をかなり防げます。「暑くなったら外す・寒くなったら巻く」がすぐできるので、室温調整が難しい状況でも対応できます。
おなかは大きな血管が集まっているため、腹巻きで温めると全身の血流改善にもつながります。授乳中も邪魔にならないので試してみてください。
足首には大きな血管が通っており、ここを温めることで全身の血の巡りが良くなります。冷えが強い日はレッグウォーマーや靴下を活用しましょう。
フローリングに直接座っている場合は、床からの冷えも大きな原因になります。ラグやマットを敷くだけでも変わります。
固まった肩と首を直接温める方法として、蒸しタオルが効果的です。
作り方: 濡らしたタオルを電子レンジで1分ほど加熱し、少し冷ましてから肩にのせる。
授乳の合間や赤ちゃんのお昼寝中など、5〜10分でもあてるだけでかなり楽になります。赤ちゃんを抱っこしていないタイミングを見つけて取り入れてみてください。
合谷(ごうこく): 手の甲、親指と人差し指の骨が交わる手前のくぼみ。 血流を促進し、体を温める効果があります。反対の手の親指でゆっくり押しもみしてください。
太衝(たいしょう): 足の甲、親指と人差し指の骨が交わる手前のくぼみ。 肝の気の流れを整え、冷えや肩こりにも効果的です。
どちらも授乳しながら片手で押せるので、日常に取り入れやすいツボです。
赤ちゃんは体温調節機能がまだ未発達のため、大人以上に冷えの影響を受けやすいです。
エアコンの風が直接赤ちゃんにあたらないよう、サーキュレーターや扇風機で空気を循環させながら、赤ちゃんのいる方向への風向きを調整しましょう。
おなかの冷えは赤ちゃんの睡眠や機嫌にも影響します。薄いガーゼ素材の腹巻きをおむつの上から着せておくだけで、寝冷えを防げます。夜泣きや機嫌が悪い日が続く場合、冷えが原因のこともあります。
| 対策 | タイミング | 難易度 |
|---|---|---|
| 室温を26〜28℃に設定する | すぐに | 簡単 |
| ストールを首・肩にかける | 冷えを感じたら | 簡単 |
| レッグウォーマーで足首を温める | 日常的に | 簡単 |
| 蒸しタオルを肩にあてる | 授乳の合間 | 少し手間 |
| 合谷・太衝を押す | 授乳中・隙間時間 | 簡単 |
今日からできるアクション:
冷えは「じわじわ」体を蝕んでいくので、自覚しにくいのが厄介なところです。「最近なんとなくしんどい」と感じているなら、冷えへの対策を一つずつ始めてみてください。
Q. 冷房は全部切ったほうがいいですか?
A. 初夏とはいえ熱中症のリスクもあるので、完全に切るのはおすすめしません。設定温度を高め(26〜28℃)にしたうえで、ストールや腹巻きで体を守る「ちょうどいい状態」を目指してください。
Q. 赤ちゃんと同じ室温で過ごすべきですか?
A. 基本的には赤ちゃんに合わせた室温(26〜28℃)でOKです。ママが寒く感じる場合は、自分だけ羽織るもので調整しましょう。赤ちゃんの室温を上げすぎると、今度はSIDS(乳幼児突然死症候群)のリスクが上がることが指摘されているため、室温のコントロールは慎重に。
Q. 肩こりがひどくなったら病院に行くべきですか?
A. 腕のしびれ・頭痛・めまいを伴う場合、または3〜4週間セルフケアを続けても改善しない場合は、整形外科または鍼灸院を受診してください。産後の肩こりには骨盤・姿勢も関係していることが多く、専門家の目でみてもらうと的確なアドバイスがもらえます。