この記事を書いた人
はり師・きゅう師(国家資格) 整骨院勤務15年の現役鍼灸師パパ。 肩こり・腰痛・産後ケアを専門に、のべ数千名を施術。 現在は0歳の息子を育てながら、リアルな育児体験をもとに情報発信中。
この記事について: 整骨院15年・鍼灸師パパとしての経験をもとに書いています。産後のパートナーを支えながら感じた「回復の難しさ」と、鍼灸師として知っている東洋医学的なアプローチをお伝えします。
産後の奥さんを見ていて、一番つらかったのは「憔悴している顔」でした。
抱っこしようとしても体が動かない。寝ても疲れが取れない。そんな状態が続いていました。
一番心に刺さったのは、奥さんが子どもを見ながら「こんなに元気なのに、なんで自分は」と言った瞬間です。
産後の疲れは気力の問題ではありません。体が消耗し切っているんです。でもその時の私には、言葉だけしか返せなかった。「大丈夫だよ」と言いながら、何もできていなかった。
言葉より行動だ、と気づいたのはそれからです。
産後の疲れは、睡眠不足だけが原因ではありません。東洋医学の視点から見ると、出産によって「気血(きけつ)」が大量に消耗された状態が続いていることが、回復の遅さに大きく影響しています。
今回は「気血不足」という概念をやさしく解説しながら、産後ママが少しでも早く回復するためのヒントをお伝えします。

まず大前提として知っておいてほしいのは、産後すぐに元気になれないのは当たり前だということです。
産後の体は、出産からの回復と赤ちゃんのお世話が同時に続く状態です。さらに次の負担が重なります。
これらが重なっているのに「疲れが取れない」と感じるのは、ごく自然なことです。

東洋医学では、体を動かすエネルギーを「気(き)」、体の隅々に栄養と潤いを届けるものを「血(けつ)」と呼びます。
出産は文字通り「命を生み出す」大仕事。この過程で体の気血を大量に使い果たした状態が「気血不足(きけつぶそく)」です。
気(エネルギー)が不足すると:
血(栄養・潤い)が不足すると:
産後ママに「疲れが取れない」に加えて、これらのいくつかが重なっているなら、気血不足の状態かもしれません。

以下のうち3つ以上当てはまる場合、気血不足のサインが出ている可能性があります。
産後の抜け毛や肌荒れも、気血不足が一因とされています。「産後だから仕方ない」と諦めずに、積極的にケアしていきましょう。

私が産後にやったのは、食事を作ることでした。
食材の買い出し、日用品の補充、家事全般。鍼灸師として体の知識はあっても、家のことはそれまでほとんど奥さん任せでした。
やってみて初めてわかりました。「いつもこんなにやってくれていたのか」と。
産後に家事を引き受けることは、パパにとっても大事な学びになります。
東洋医学では、気血を補う食材を「補気食材」「補血食材」と呼びます。特別なものを用意しなくても、日常のスーパーで手に入るものばかりです。
手軽な取り入れ方: 炊飯時になつめや黒ごまを加えたご飯、ほうれん草のごまあえ、週1〜2回のレバー炒めなど、無理のない範囲から始めてみましょう。

場所: ひざのお皿のすぐ外側のくぼみから、指4本分下がったところ。
押し方: 親指の腹を当て、骨に向かってじわじわと圧をかける。5秒押して離す、を10回繰り返す。
東洋医学では、足三里は胃腸の働きや全身のだるさを考えるときによく使われます。押して心地よい範囲で行い、疲労の治療代わりにはしないでください。
私は鍼灸師として、奥さんに足三里の施術をしました。
経絡全体を整えながら、体をほぐしていく。自分の患者さんへの施術とは全然違う気持ちで、「良くなってほしい」という気持ちだけで手を動かしていました。
施術を続けるうちに、奥さんが「少し楽になった」と言ってくれた。
家でパートナーに対してできるケアがあると知ったのも、この経験があったからです。鍼灸師としてではなく、夫として体を整えるお手伝いができた。それが今も一番の財産だと思っています。
場所: 内くるぶしの頂点から指4本分上、骨の際。
押し方: 親指でしっかり押す。ズーンとした鈍い痛みを感じれば正しい場所です。
三陰交は「肝・脾・腎」という三つの経絡が交わるとされ、東洋医学では産後の体を考えるときにも使われるツボです。
注意: 妊娠中、産後間もない時期、出血や痛みがあるときは自己判断で強く刺激せず、産婦人科や助産師へ相談してください。

気血不足の回復を遅らせてしまう習慣も知っておきましょう。
「家が散らかっているのが気になる」「もっとちゃんとやらなきゃ」という気持ちはよく分かります。ただ、産後6〜8週間は「褥瞳期(じょくちゅうき)」と呼ばれる本来は安静にすべき時期。無理に動くと、気血の消耗がさらに加速します。
家事の優先度を思い切って下げる勇気を持ちましょう。
忙しいときほど自分の食事が後回しになりがちですが、食事こそ気血を作る一番の源です。完璧な食事でなくていいので、1日3回、温かいものを食べる習慣だけは守ってみてください。
コンビニのスープや冷凍食品でも、「温かい食事」を食べることに意味があります。
東洋医学では、冷えが気になる状態を体調を見る手がかりの一つにします。冷たい物や生野菜を一律に避ける必要はありません。温かい物も取り入れながら、食べやすく栄養の偏りにくい食事を選びましょう。
産後ケアに役立つグッズは産後ケアグッズ おすすめランキング10選で詳しく比較しています。自分の体質(気虚・血虚・水滞)に合わせた選び方は気・血・水タイプ別 産後ケアグッズの選び方もご覧ください。

| アプローチ | 具体的な方法 | 取り入れやすさ |
|---|---|---|
| 食事 | なつめ・黒ごまをご飯に混ぜる | 簡単 |
| 食事 | 週2回ほうれん草を食べる | 簡単 |
| ツボ押し | 足三里を1日1回10回押す | 簡単 |
| ツボ押し | 三陰交を授乳中に押す | 簡単 |
| 生活習慣 | 体を冷やさない(腹巻き・靴下) | 簡単 |
| 考え方 | 家事の完璧主義をやめる | 少し難しい |
今日からできるアクション:
産後の回復に「正しい速さ」なんてありません。
でも、隣にいるパパが「食事を用意する・休める時間をつくる・家事を引き受ける」と具体的に動けば、ママが休みやすい環境をつくれます。
家事を具体的に減らす方法は、産後の家事時短サービス・家電の選び方にまとめています。全部導入せず、一番負担の大きい家事を一つ減らすところからで十分です。
言葉より行動。私が産後の育児で一番学んだことは、鍼灸の知識よりそこでした。

Q. 産後どのくらいで気血不足は回復しますか?
A. 回復の経過には大きな個人差があり、「何か月なら元通り」とは言い切れません。東洋医学では産後100日を養生の目安にする考え方もありますが、医学的な回復期限ではありません。疲れが強い、悪化する、日常生活が難しい場合は、期間にかかわらず産婦人科などへ相談してください。
Q. 漢方薬を試したいのですが、産後・授乳中でも使えますか?
A. 産後・授乳中でも使われる漢方薬はありますが、症状や体質、ほかの薬との組み合わせで選択が変わります。市販薬を自己判断で始めず、授乳中であることを伝えたうえで医師または薬剤師へ相談してください。
Q. 夫はどんなサポートをすればいいですか?
A. 「妻の疲れが取れない」という状態を、「怠けている」「気力の問題」と誤解しないことが一番大切です。体が消耗し切っている状態なので、食事の準備・夜間授乳の一部交代・「横になっていいよ」という声かけが具体的な助けになります。パパが東洋医学を少し知っておくだけで、妻への理解がぐっと深まります。
Q. どんな疲れなら受診したほうがいいですか?
A. 強いだるさが続く、息切れ・動悸・めまいがある、発熱や強い痛みがある、出血が増える、食べられない・眠れない、気持ちの落ち込みや不安が強い場合は、産婦人科などへ相談してください。急に悪化した場合や、自分や赤ちゃんを傷つけそうな気持ちがある場合は、ひとりにならず家族や医療機関へすぐ助けを求めてください。