この記事を書いた人
はり師・きゅう師(国家資格) 整骨院勤務15年の現役鍼灸師パパ。 肩こり・腰痛・産後ケアを専門に、のべ数千名を施術。 現在は0歳の息子を育てながら、リアルな育児体験をもとに情報発信中。
育児が始まって1年。
いつからか、朝起きたときに腰が固まっているのが当たり前になっていませんか。
床から立ち上がるとき、無意識に「よいしょ」と言う。ソファから立つとき、一回で伸びない。靴下をはくときに、片足を上げるのが少し面倒。前は何ともなかったのに。
そして、それを誰にも言っていない。
これ、育児中のパパにものすごく多いパターンです。整骨院で15年働いていますが、「そういえば1年くらい前から……」と言って来院される方の多くが、この状態を通ってきています。
僕自身、生後4ヶ月のころに人からもらったエルゴを使い始めて、腰と肩をしっかりやられました。原因は赤ちゃんの位置が低かったこと。鍼灸師をやっていても、自分の体のことは見えていませんでした。
いまうちの息子は11ヶ月。体重も増えて、抱っこの負担は当時とは比べものになりません。だから、1年目のこのタイミングで一度リセットしておくことが、どれだけ大事かを実感しています。
この記事では、整骨院勤務15年の鍼灸師パパ目線で、育児1年目の腰を、慢性化する前にリセットする方法をまとめます。
この記事でわかること:
腰痛には、急性と慢性があります。
急性は、ぎっくり腰のように、ある日突然やってくるものです。分かりやすいので、みんな休みます。
やっかいなのは、慢性化のほうです。
慢性の腰痛は、こんな順番で進みます。
ここまで来ると、本人はもう腰痛だと思っていません。「疲れ」だと思っています。
でも、体の中では別のことが起きています。
痛みが長く続くと、脳と神経のほうが「痛みを感じやすいモード」に切り替わっていくことが分かっています。同じ刺激でも、より強く痛みとして認識するようになる。だから、原因になった負担がなくなっても、痛みだけが残ることがあります。
慢性化は、時間が経つほど戻しにくくなります。 だから育児1年目という、まだ引き返せるタイミングでのリセットに意味があります。
心当たりがあるはずです。
体の前に8〜10kgをぶら下げると、体は倒れないように上半身を後ろに反らせます。この「反り腰」の状態が、腰の後ろ側にずっと負担をかけます。
そして位置が低いほど、この反りは強くなります。僕がやられたのは、まさにこれでした。
抱っこ紐の装着を見直すだけで変わることがあります。 → 抱っこひもで腰・肩を痛めない正しい装着方法【4ステップ】
1日に何回、床にいる子どもを抱き上げているでしょうか。
多い日なら、20回、30回では済まないと思います。しかも、たいてい急いでいます。膝を曲げずに、腰から折れるように前かがみになって、片手で持ち上げる。
腰にとっては、これがいちばん危ない動きです。
しかもこの動作には、ひねりが加わることが多い。テレビを見ながら、料理をしながら、横から手を伸ばして抱き上げる。前かがみ+ひねり+重量は、腰の椎間板にとって最悪の組み合わせです。
おむつ替え、お風呂、寝かしつけ、床拭き。
育児は、中腰でじっとしている時間が異様に多いです。動いているほうがまだマシで、中腰で止まっているのが腰にはこたえます。
特に寝かしつけ。布団の横で、体をひねって腕だけ伸ばしてトントンする姿勢を、20分。あれで腰をやる人、本当に多いです。
問題は、これらの負担そのものより、回復する時間がないことです。
筋肉も関節も、休んでいる間に修復されます。その時間が確保できないまま、翌日また同じ負担がかかる。これが1年続くと、体は「痛いのが普通」の状態に落ち着いてしまいます。
寝不足の乗り切り方はこちらに。 → 量より「質」で乗り越える!細切れ睡眠の乗り越え方
東洋医学の話を1つだけします。
東洋医学では、痛みの原因を大きく2つに分けて考えます。
「不通則痛(ふつうそくつう)」 — 通じないから痛む 「不栄則痛(ふえいそくつう)」 — 栄養が届かないから痛む
慢性化した腰痛で問題にすることが多いのは、前者です。そして、その中でも血の流れが滞った状態を 瘀血(おけつ) と呼びます。
瘀血のイメージは、「古い血が居座って、流れが悪くなっている状態」です。
東洋医学では、瘀血の痛みに、こんな特徴があるとされます。
| 瘀血のサイン | 実際の感じ方 |
|---|---|
| 痛む場所が決まっている | いつも同じ一点が痛い |
| 刺すような、重だるい痛み | ズーンと重い、または刺すよう |
| 夜に強くなる | 夜中や明け方に痛みで目が覚める |
| 押すと痛い(押されるのを嫌がる) | 触られると「そこそこ」となる |
| 温めると少し楽 | お風呂で楽になる |
| 長く続いている | 数ヶ月〜年単位 |
「いつも同じところが、重く、夜に痛む」。これが当てはまるなら、東洋医学的には流れが滞っている状態と考えます。
では、瘀血を減らすには何をするか。答えは驚くほど地味です。
つまり、東洋医学的にも、慢性腰痛への答えは「安静」ではなく「巡らせること」です。
現代の腰痛診療でも、慢性腰痛に対しては安静より活動を続けるほうがよいという考え方が主流になっています。東洋医学と方向性が一致しているのは、なかなか面白いところだと思います。
東洋医学の体の見方は、こちらでやさしく解説しています。 → なぜ育児でこんなに疲れるの?東洋医学の「気・血・水」で読み解く
長時間のトレーニングは提案しません。育児中に続くわけがないからです。
やるのは3つだけ。合計で1日5分あれば足ります。
セルフケアより先に、これをやってください。毎日の動作を変えるほうが、圧倒的に効きます。
抱っこ紐の位置を上げる 赤ちゃんの頭のてっぺんに、自分のあごが乗るくらいの高さ。腰ベルトは骨盤の上に水平に。1時間に1回、締め直す。
床からの抱き上げは、膝を曲げる 腰から折るのではなく、しゃがんでから、子どもを体に近づけて、脚の力で立つ。急いでいるときこそ、これを意識してください。
ひねりながら持ち上げない 必ず、体を子どものほうに正対させてから持ち上げる。半歩動くだけでいいです。
寝かしつけは横向きに寝てしまう 腕を伸ばした中腰でトントンするより、自分も横になったほうが腰は守れます(寝落ちのリスクはありますが、腰にはやさしいです)。
家事の時間はおんぶに切り替える 前抱っこより、背中側のほうが腰の負担は減ります。 → 抱っこ紐からおんぶへ|10kg時代の腰を守る背負い方
朝と寝る前、どちらかでかまいません。
① 壁ドローイン(1分)
反り腰でパンパンになった腰を、ニュートラルに戻します。
② お尻のストレッチ(左右30秒)
腰が痛い人の多くは、お尻の筋肉が固まっています。腰そのものより、ここをゆるめるほうが効くことがよくあります。
③ 股関節の前を伸ばす(左右30秒)
抱っこと座り姿勢で縮んだ、太ももの付け根(腸腰筋)を伸ばします。ここが硬いと、立っているだけで腰が反ります。
④ キャット&カウ(30秒)
背骨全体を動かして、固まった背中をほぐします。
赤ちゃんが下にいると邪魔してきますが、それはそれで一緒に遊べます。
寝る前のケアはこちらに詳しくまとめています。 → 育児疲れが翌朝リセット!寝る前10分ストレッチ完全版
これがいちばん難しくて、いちばん効きます。
湯船に週2回でいいので入る シャワーだけだと、深部の筋肉は温まりません。40℃で10分。それだけで、翌朝の固さが変わります。
15分の仮眠を確保する まとまった睡眠が取れないなら、細切れでも足していく。休日にどちらかの親が15分横になれる時間をつくるだけでも違います。 → 夜泣き対応で睡眠不足のパパへ。仮眠の正しい取り方と疲労回復ツボ
外注できるものは外注する わが家では、産後2ヶ月ごろに妻がマミーブレインでかなり疲弊した時期があって、ネットスーパーなどで家事を外注しました。あれは正解だったと思っています。
「自分たちで全部やる」を続けると、必ずどこかが壊れます。買い物、掃除、食事の準備。お金で時間を買えるところは、買っていいと思います。 → 産後の家事時短サービスまとめ
週末に10分だけ、自分の時間をつくる 体のケアだけでなく、気持ちのリセットも回復の一部です。 → 育児疲れのパパへ!週末10分でできるリフレッシュ習慣
道具なしで押せるものだけ。
ツボ押しの基本ルールはこちら。 → ツボ押しの正しいやり方と押してはいけない場所
これは体の話ではなく、生活の話です。
パパの腰痛が慢性化する背景には、言わないという要素がかなりあります。
気持ちは分かります。でも、黙って耐えた結果、動けなくなったら、家族はもっと困ります。
僕が整骨院で見てきた中で、いちばんよくないのは「限界まで我慢して、ある日突然動けなくなる」パターンです。そうなると、抱っこもお風呂も何もできません。
自分の体を守ることは、家族を守ることの一部です。
パートナーに「最近、腰がきつい」と言う。休日にどちらかが1時間休む番を作る。これは甘えではなく、育児を続けるための設計だと思っています。
次のような症状があるときは、ストレッチで様子を見ずに、整形外科を受診してください。
また、腰痛が長引くと気分も落ち込みやすくなります。痛みと気分は、お互いに影響し合います。「なんとなくずっとしんどい」が続いているなら、体のケアと一緒に、休む時間を意識的に確保してください。
抱っこ紐の装着を見直したいとき → 抱っこひもで腰・肩を痛めない正しい装着方法
おんぶへの切り替えを考えているとき → 抱っこ紐からおんぶへ|10kg時代の腰を守る背負い方
腰ベルトを検討しているとき → 抱っこで腰が限界…腰ベルトの選び方と正しい使い方
寝る前のケアを取り入れたいとき → 育児疲れが翌朝リセット!寝る前10分ストレッチ完全版
睡眠不足が根っこにあるとき → 夜泣き対応で睡眠不足のパパへ。仮眠の正しい取り方と疲労回復ツボ
気持ちのリセットもしたいとき → 育児疲れのパパへ!週末10分でできるリフレッシュ習慣
育児1年目の腰痛は、「痛いのが普通」になる一歩手前で止められます。
やることは3つだけです。
| ステップ | 中身 |
|---|---|
| ① 動作を変える | 抱っこ紐の位置を上げる。膝を曲げて拾う。ひねらない |
| ② 3分動かす | 壁ドローイン、お尻と股関節を伸ばす、背骨を動かす |
| ③ 回復をつくる | 湯船、仮眠、外注できるものは外注する |
僕は生後4ヶ月のとき、抱っこ紐の位置が低いまま使い続けて腰と肩をやりました。鍼灸師でも、自分のことは見えません。だから、この記事を読んでくださっているあなたも、たぶん自分で思っているより負担が溜まっています。
完璧にやろうとしなくていいです。今日は、壁に背中をつけて1分だけドローインをしてみてください。それだけでも、明日の朝の固さが少し違うかもしれません。
子どもはこれからもっと重くなります。体をもたせるのは、いまです。
※ 本記事は一般的なセルフケア情報であり、医療行為や医師の診断の代替ではありません。しびれ、脱力、排尿排便の異常を伴う腰痛は緊急性がある場合があります。強い痛みや長引く症状は整形外科などの医療機関にご相談ください。
整骨院勤務15年・鍼灸師パパより